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Channel: 東京藝術大学美術学部建築科|大学院美術研究科建築専攻 Tokyo University of the Arts Faculty of Fine Arts / Graduate School of Fine Arts Department of Architecture
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 新入生の皆さんへ

 本来なら先週土曜日に予定されていた入学式・オリエンテーションの席で皆さんと対面し、今週からは前期授業も始まり、大学生生活がスタートしていたはずでした。
 しかし、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、前期の開講を5月11日まで遅らせることとなり、今後の状況次第では遠隔授業などの可能性も高くなっています。不安感に苛まれる日々が続いていますが、もう皆さんは建築を学ぶ大学生です。この一ヶ月の間、課題や講義は中止になりましたが、少しでも有意義な時間を過ごして欲しいと我々は願っています。そこで、教員一人一人から、皆さんに向けて推薦図書を提示することにしました。
 この状況下なので、書店や図書館に足を運ぶのは難しいでしょう。通販などを利用して無理のない範囲で入手して、目を通して欲しいと思います。
 それでは皆さんに会えることを楽しみに待っています。

 東京藝術大学 美術学部 建築科 教員より






藤村龍至 准教授(建築設計第一研究室) の推薦図書

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。

建築科の設計課題を始めるにあたり手にとるなら
以下の3冊をお勧めします。
1『眼を養い手を練れ』宮脇檀住宅設計塾
2『ゲンロン0 観光客の哲学』東浩紀
3『これからの日本に都市計画は必要ですか』蓑原敬ほか
1は設計系、2は人文系、3は都市計画・まちづくり系の知識をさらっと学べます。
宮脇檀さんは1954年に東京藝術大学建築科に入学した皆さんの先輩です。

「今読むなら」ということで、私の関心で挙げるなら
以下の3冊をお勧めします。
1は設計系、2は人文系、3は都市計画・まちづくり系でそれぞれ今の建築家の話題を追っていくときに手がかりとなると思われます。ただし、大学院生レベルかもしれません。
1 『アルファベット そして アルゴリズム: 表記法による建築――ルネサンスからデジタル革命へ』 マリオ・カルポ
2『地球に降り立つ』ブルーノ・ラトゥール
3 『エコロジカル・デモクラシー:まちづくりと生態的多様性をつなぐデザイン』ランドルフ・へスター

新入生の皆さんが藝大建築科の先生方の作品や考え方を知るなら
例えば下記の3冊などもお勧めします。
1『フラジャイル・コンセプト』青木淳
2『1/1000000000』中山英之
3『ちのかたち』藤村龍至

お会いできるのを楽しみにしています。



















中山英之 准教授(建築設計第二研究室)の推薦図書

『宇宙船地球号操縦マニュアル』 バックミンスター・フラー
  ひろくて長い視野を持って、世界を眺めてみよう!

『造形思考(上) (下)』 パウル・クレー
  線や形には無限の意味が隠れている!

『名建築と名作椅子の教科書 』 アガタ・トロマノフ
  1年生では、皆さんも椅子を1脚つくりますよ!


















樫村芙実 講師(建築設計第三研究室)の推薦図書

『建築は詩ー建築家・吉村順三の言葉100』
 監修=永橋 爲成 編集=吉村順三展実行委員会|彰国社|2005年

 1年生最初の課題の根底に流れる「吉村順三スピリット」を感じられる一冊です。彼の著作、図面は建築科図書館にたくさんありますので、折を見てめくってみるのが良いと思いますが、この本はその中でもとりわけ易しく、読みやすい本です。早く建築を学びたい!!と飢え急いている新入生の気持ちをやさしく執り成してくれる、率直で具体的な言葉の数々に、頷いたり(あるいは首を傾げたり?)してみてください。

『グレンマーカットの建築』・『シンキングドローイング・ワーキングドローイング』
マリアム・グーシェ、トム・ヘネガン、キャサリン・ラッセン、勢山詔子|写真=アンソニー・ブローウェル|TOTO出版|2008

 マーカットさんはオーストラリアの吉村順三。と私は思っています。場所や素材、寸法は異なりますが、環境への考え方、使われる言葉に多くの共通点を見いだせます。2冊セットで刊行された作品集で、1冊は写真が多め(巻頭の文章「建築を教えるときに大切なこと」は学ぶ方にも響きます)、もう1冊はドローイングが多めです。マーカットさんは模型を一切作らずスケッチや図面のみで設計されます。後者のタイトルが示すように、思考するドローイングとはなんだろう?と考えながら、課題を通して自身の’手’と'思考'とに向き合ってみてください。

『内臓とこころ』三木成夫 |河出文庫|2013

 建築からちょっと離れて、そもそも人間とは何か?を解剖学的に考えてみるための一冊です。私は同じ著者の『胎児の世界』を読み返していますが、人間の記憶や生まれ育つことを自分に重ねてみると、脈打ち温かい生き物として人間を思い至り、そして改めて、では建築には何ができるのか?を考えてみたら面白いと思います。

















青木淳 教授(環境設計第一研究室)の推薦図書

 手に入れやすい、買いやすいという観点から、文庫から3冊を。

『空間の詩学』ガストン バシュラール|ちくま学芸文庫
 
 もともとが難しい内容なのか、訳が悪いのか、わからないけれど、とても読みづらい。ただこの本は、日本で建築なり空間を考える人に、ひとつの大きな影響を与えた本。たとえば、奥野健男『文学における原風景-原っぱ・洞窟の幻想』や多木浩二『生きられた家』など。じつは、ぼくも、この本を(全部ではない、気になったところだけ)何度も、何度も、読んできた。すると、何を言いたいのかつかめないけれど、覚えてしまう。そして、いつのまにか「わかってしまう」。そういう本を、何冊か、持てるといい。相性があるので、あなたにとって、この本がそれに相当するかどうかはわからないけれど。


『猫の客 』平出 隆|河出文庫

 単行本として出たのが2001年。以来、何度となく、読み返すことになる本だった。ひとつひとつを取り出して読むことも可能な、小さな29の章が集まってできている小説だ。そのつくりはさながら、練り上げられた部材が精巧に組み上げ構築された建築のよう。あるいは、小さな流れが合わさり、知らず知らずのうちに、抗うことのできない大河が生まれるようでもある。
 政治思想家であり詩人でもあったマキアヴェッリは、「運命フォルトゥーナ」を、川のそんな流れとして見ていた。そんな逸話が、この小説のなかで紹介されるのだが、実際、それこそがこの本の主題だろう。
 隣家の猫の、日ごとの出入りという小川。四季がめぐる家という空間の小川。東京という都市の日常という小川。もちろん、そこに生きる人間の日々の生活の小川。逝く人を看取る小川もある。それらが、いつしか「難を逃れるか逃れないか、という境の波」にまで育ってしまっている。
 本のなかの、最小の流れは、一つ一つの文。たとえば、「お爺さんもお婆さんも、妻もあの猫も、自分さえもいなくなった庭に、ひとりで立っていることがあった。」
 不思議な文だ。「自分さえもいなくなった」まで読んできて、誰もいない情景が浮かぶのが、続く「ひとり立っている」で「ただし、自分はいる」と、ひっくり返る。さらに、「立っていることがあった」で、それを回想する自分が現れる。
 ここには、自分という存在についての揺らぎがある。自分とそれを見る自分とのの距離が揺らいでいる。そう言えば、この本には、ただの一度も、「私」なり「僕」なりの一人称が出てこない。この本を構成する大元の湧き水は、確固たる「私」が消えた「手ぶら」の、不確かな「私」なのだ。
 そんな不確かな流れの傍に、幾筋もの流れが近づきまた離れ、ついにひとつの大きな流れに呑まれたかというところで、もう一度、不確かな流れが顔を出し、ふいに終わる。なんと精緻な散文の建築であることだろう。


『いい子は家で』青木 淳悟 |ちくま文庫

 この本のなかで、とくに『ふるさと以外のことは知らない』について解説しておこう。
 冒頭は、神の視点からはじまっている、ように見える。それが2ページめの、「さらにいえば鍵の管理とはどこか家庭の掌握とでもいうべきものに通じていはしないか」と、疑問形が出てくるあたりで怪しくなり、どうもこの神はさほど完全な存在ではなく、観察者にすぎないのではないかと思えてくる。そして、その数行後の「……とくに性格の似て非なる車のキーをそこから省いておきたいのである」の「おきたい」で、とうとう、神ではなく誰か人間の視点だということがはっきりする。では誰の視点なのか、と思いながら読み進んでいくと、次のページの終わりに、「太郎は十三歳になる年の四月はじめ、地元の公立中学の正門前で、そこを入るブレザー姿の自分の背中を見送って家に帰ってきたのだという」と不思議な文が出てきて、そのような比喩は十三歳の子供が使えそうな気がしないから、太郎ではなく、両親のいずれかがいったのを聞いたのかな、と思う間もなく、つづいて書かれているのがこんな調子なのである。

 二階の室内ドアのうち一つが開いていて、一つが閉じている。開いているほうの部屋から「遊ぶ気満々の」次郎が飛び出してくる。そしていつものようにとなりあう中学生の兄の部屋に遊びに入ろうとしたところ、鍵のかからないはずのその部屋のドアが開かなくなっていて、自分にはもう自由な入室が許されていないのだということをするどく察知して彼は思わず泣いてしまった。やがて室内から兄が高校三年まで聴きつづけることになるロックミュージックが流れ出し、それは弟の泣き声をかき消さんばかりにまでボリュームが高められていった。

 「遊ぶ気満々の」と括弧でくくられている。そこで読者は、この家庭のなかで、子供のときの弟の次郎を評する表現としてその言葉がよく使われていたのだろう、と思う。この視点の持ち主は、どうもこの家族に深く入り込んでいるらしい。「自分にはもう自由な入室が許されていないのだということをするどく察知して」では、家庭のなかどころか、次郎の心のなかにまで入り込んでいる。知りすぎている。流れ出す音楽が、太郎が「高校三年まで聴きつづけることになる」曲であることも知っている。こうなると、もう全能の神の視点だ。なのに、なぜかその曲のタイトルは語られない。まさかこの神、知らないわけではあるまいに、と思いながら、つづきを読めば、

 しかしそうしていつまで自分が泣きつづけようとしているのか、それもわからないまま泣く次郎は突然ぐいと横から手を引かれてよろめきながら自室に入りこんだ。手を引いたのはなみだ目で見てもすぐに兄の太郎だとわかった。次郎はなみだをぬぐったその腕で今度は自室のドアを閉め、隣室の音楽と、依然としてやまない泣き声とをともに遮断したのだという。ドアの外で弟はまだまだ泣きつづけていた。それから以後はドアではなく間仕切り壁を通り抜けて太郎と次郎の兄弟は互いの部屋を行き来しているということだった。

 語られているこの状況、理解できるだろうか。次郎は誰かに自室にひっぱり込まれた。ひっぱったのが「すぐに兄の太郎だとわかった」の「わかった」は次郎の視点である。しかし、太郎の部屋のドアがそれより前に開いたなら、そのことに次郎も気づきそうなものだから、たぶんそのドアは開いていない。なのになぜか、兄が部屋にいた。このことはその後も、謎として残ったはず、と思う。
 ともかく、次郎は隣の音だけでなく、自分の泣き声のうるささに耐えかね、泣くのをやめた、のではなく、ドアを閉めた。まだ泣いている。太郎の視点からすれば、だから「弟はまだまだ泣きつづけていた」。しかし、次郎の視点からすれば、ドアは閉まっているのだから泣き声は「ドアの外」から聞こえてきている。「ドアの外で弟はまだまだ泣きつづけていた」は、その太郎と次郎の視点が、無理やり合体されてしまっている結果に思える。
 このあたりから、発話者のいうことが怪しくなる。最後の、「それから以後はドアではなく間仕切り壁を通り抜けて太郎と次郎の兄弟は互いの部屋を行き来しているということだった」は、なぜドアも開けずに、兄が自分の部屋にいたのかという謎について、のちに家族の間で「間仕切り壁を通り抜けたんじゃないか」などと冗談になったことがあったのだろうか、そのことを聞きつけた発話者が、深く考えずにそのまま述べているのではないか、と思えるのである。
 『ふるさと以外のことは知らない』についてなにかを書こうとすると、こうして、その読書体験をそのまま書くのと、ほとんど変わらなくなってしまう。それは、この小説が、それを読み進む体験のなかにしかないからだ。
 物語がない。しかも、描かれる対象は、ぼくたちが日常、実際に生きている世界だ。その何の変哲もない世界がどう語られるかで、ふだん見慣れた風景ではなくなってくる。こういうことがまず、いたって建築に近い。なぜなら建築の対象とは、つまり現実の敷地であるわけだが、その敷地がもともと持っているもの、その敷地をとりまいている周辺環境を前提として、その空間をなにか別の位相に変異させるのが建築だからである。 

 『ふるさと以外のことは知らない』の発話者は観察して得た、あるいは入手して得た情報を、ある一定の個性を通して判断し、読者に向かって話しつづけている。その内容からいって知性は高いし、理解力も高い。しかし、この発話者の視点は非現実的で、すべてを知ることができる全能の神になりえる能力があるのに、とつぜん、家庭生活を覗き見る観察者ほどにまで、視野がせばまってしまう。誤謬もおかす。またその視点は、母親、父親、息子の心のなかにも入り込む、と思えば、とつぜん、建築関係の本から得た知識をそのまま語りだす。
 発話者は本来は神の視点をもちえるし、そうであろうとする意志ももっている。しかし、実際にとっている視点は自由に動きまわっているように見えて、かなり不自由だ。発話者のコントロール下にはない。この家とその近傍からは出ることはないのである。という意味で、たしかにこの発話者は「ふるさと以外のことは知らない」。どう考えても、そんな発話者の視点、生身の人間のそれではない。
 では、いったい誰の視点なのか。
 それは現代の建築における発注者の視点だ、というのが、とりあえずの答えだ。とくに「公共建築」の発注者の視点。公共建築を発注するのは、形式としては、役所ではある。しかし、本当の発注者は役所ではなく、そこを実際につかう市民である。では、その市民とは誰かといえば、まさか声の大きい人というのでもあるまい。そうではなく、サイレント・マジョリティだ。しかし声なき人は見えない。存在しないに等しい。
 『ふるさと以外のことは知らない』は、発話者の視点そして読者の間で、そんな現代の発注者、つまりわれわれの肖像を描いているように思えるのである。

















ヨコミゾマコト 教授(環境設計第二研究室)の推薦図書

無意識のうちに、空間(=土地)と人と時間とのロンドとも言える作品を選んでしまいました。

『百年の孤独』ガルシア・マルケス|新潮社|1972

『方丈記』鴨長明|(現代語訳付文庫本が各社あり)

『ゼウスガーデン衰亡史』小林恭二|福武書店| 1987

















金田充弘 准教授(構造設計第一研究室)の推薦図書

『流れとかたち』 エイドリアン・ベンジャミン、Jペダー・ゼイン著|紀伊国屋書店  
 「世界を動かすのは愛やお金ではなく、流れとデザインである」序より

『シドニーオペラハウスの光と影』 三上祐三著|彰国社
 みなさんの大先輩、芸大建築科OBの三上さんが設計から竣工まで関わられらたシドニーオペラハウスのメイキング本です。設計すること、建てることの面白さと悩ましさが伝わってきます。 

『空間 構造 物語ーストラクチュラル・デザインのゆくえ』 斎藤公男著|彰国社 
 1年生の構造の授業で推薦している図書です。世界中の知っておいた方がよい構築物が、写真やスケッチ入りでたくさん紹介されています。難しい本に疲れたら、パラパラとページを捲ってみるだけでも良いと思います。  


















光井渉 教授(建築理論第一研究室)の推薦図書
 
 建築科のカリキュラムでは、建築家に必要な素養のうち、設計実技・構造・環境・建築史など最小限の内容を扱います。語学やその他共通科目も開講されますが、受け身でなく自ら本を探して読むことで様々な分野の知見を広げて欲しいと思います。そうした知見の積み重ねが、あなたの建築家としての存在を唯一無二なものにするでしょう。
 ではどのような本を読むのが良いのか、どうやって探すのが良いのか。正解はありませんが、特定のテーマについて掘り下げて論じている「新書」から選ぶのは、その一つの手がかりになります。
 大型書店に行くと、新書は一ケ所に集められています。図書館でも同じく一つの棚にまとめて配架されています。そのため、思いがけないようなテーマの本が隣り合って並び、意図しない本との出会いが期待できます。並んだ背表紙を眺めて、何か気になったものを読んでみる。面白いもの、期待外れなもの、難解なもの、納得できないもの、読後の感想は様々ですが、一月に一冊というように習慣化して継続していけば、視野が広がり考え方も変わってきます。
 近年、新書も数を増やし、中には読むに堪えない低レベルなものも散見されます。しかし、岩波新書・中公新書は、毎月数点の新刊を刊行しながらも、世代を越えて読み継がれていくものが多く、その他、ちくま新書・講談社現代新書・光文社新書・NHK出版新書、あるいは判型が少し異なりますが、朝日選書・講談社メチエ・SD選書(これは建築系の選書です)なども推奨できます。
 なお、今はコロナ禍で本屋に出向くことが憚られるので、各新書のホームページ上の目録を眺めて選書するのが良いでしょう。

 以下に新書の中から何冊か挙げて、一言添えておきます。順番に意味はありません。思いついた順です。

『不平等社会 さよなら総中流』佐藤俊樹|中公新書|2000年
 社会学の視点は建築を考える上でとても参考になります。この本は、現代日本で広がる格差と階級の問題に言及したもので、ここから多くのフォロワーが生じました。データに基づいて冷静に社会の変化を記述していて、内容も記述法も参考になります。

『立志・苦学・出世』竹内洋|講談社|1991年
 これは社会学と教育学の観点からの著作です。近代の学歴エリート層の出現を、受験制度に焦点をあてて論じたものです。個々の描写や分析も興味深いですし、社会制度が価値観まで変えていく状況の分析はシャープです。受験を終えたばかりの皆さんには、特に興味深く読めるのでは。

『複合不況』宮崎義一|中公新書|1992年
 経済の問題も建築にとっては重要です。この本はバブル崩壊直後にそのメカニズムと深層的な要因を解説し、通常の景気循環の波とは異なる不況の長期化を予想したものです。刊行直後に読んで、とても衝撃を受けたことを覚えています。同じ著者の『ドルと円』(岩波新書、1988年)もおすすめ。

『トラクターの世界史 人類の歴史を変えた鉄の馬たち』藤原辰史|中公新書|2017年
 農業の研究者による著作。単なる機械であるはずのトラクターの普及が農作物の大量生産を実現し、結果として農村から国家の在り方までを変えていったことを示しています。思想や理念ではなく、道具としての機械が果たした役割の大きさを実感できます。

『博物館の誕生 町田久成と東京帝室博物館』関秀夫|岩波新書|2005年
 上野公園には、博物館・美術館・図書館・音楽ホールそして藝大が立地しています。なぜ、この場所に多くの文化施設が集中して立地しているのでしょうか。この本は、これから皆さんが数年間過ごすことになる上野という場所の性格が造られていった経緯を記述したものです。建築と立地と人物の関係を考える際にも重要な視点が含まれています。

『歴史人口学から見た日本』、速水融|文春新書|2001年
 皆さんがこれまで習ってきたものとは全く異なる歴史です。ここでは英雄も事件も描かれません。人口の増減とその移動状況から社会の変化がとても明快に示されていて驚きを覚えます。この著者には、スペイン風邪のパンデミックを扱った著作もありますが、その内容はまさしく今の世界をみるようです。


一言は書き添えませんが、以下も推薦しておきます。
『夜はくらくてはいけないか 暗さの文化論』乾正雄|朝日選書|1998年
『橋はなぜ落ちたのか 設計の失敗学』ヘンリー・ペトロスキー|朝日選書|2001年
『博覧会の政治学』吉見俊哉|中公新書|1992年
『「お墓」の誕生』岩田重則|岩波新書|2006年
『一茶の相続争い』高橋敏|岩波新書|2017年
『キメラ 満洲国の肖像』山室信一|中公新書|2004年
『古文書返却の旅』網野善彦|中公新書|1999年
『「民都」大阪対「帝都」東京』原武史|講談社メチエ | 1998年
『明治神宮の出現』山口輝臣 |吉川弘文館歴史文化ライブラリー | 2005年


















野口昌夫 教授(建築理論第二研究室)の推薦図書

私の3冊は、自分が学生の時に影響を受けたものにします。
先入観を与えたくないので、推薦理由やコメントはしません。

1 『16の住宅と建築論』篠原一男 |美術出版社
2 『現代日本の住宅』林雅子編著 |彰国社
3 『建築の解体』磯崎新著 |美術出版社

















森純平 助教の推薦図書

これまで本の中でしか知らなかった憧れの建築家やアーティスト、同級生達といつのまにかテーブルを囲んで議論ができるようになっていることに、ある日ふとうれしくなります。
僕が藝大にはいってから、著者本人やその関係者から、直接話を聞いたことがある生きた言葉をイメージできる本です。
知恵を経験に変えることができる藝大生活をぜひ楽しんでください。

『建築はほほえむ』松山 巖 |文明の庫| 2010/12
松山さんもですが元倉真琴さんとの対話しているような一冊。

『良心の領界』 スーザン・ソンタグ | NTT出版 | 2006
木幡和江さんという方を通してスーザンの生き方のようなものを教わりました。

『ネンドノオンド』佐藤 オオキ |日経BP | 2019/4/4
まるで学校の製図室での会話のような気さくな雰囲気で世界のデザイナーとの会話が繰り広げられているの横できいているような気分になります目指せ世界。


















栄家志保 教育研究助手の推薦図書

建築を作るときには、人や土地をたくさん観察します。そのまなざしの深さや広がり、自由さを感じられる本を選びました。

『集落の教え100』原広司
1枚の写真と1つの単語のセットから、無限の想像が膨らみます。開く度に気になるページが変わるので、いつまで経っても読み終わった気にならない本です。

『介護するからだ』細馬広通
介護する人とされる人の双方のからだのやりとりが日常会話のように描かれています。緻密で愛情深く、そしてユーモア溢れる観察は誰もを魅力的にみせる力があるのだと知ります。

『浅草紅団|浅草祭』川端康成
川端康成は、浅草に住みながらこの架空の物語を書いたそうですが、<あくまで浅草の散歩者、浅草の旅行者に過ぎなかった>と告白しています。彼が捉えた昭和はじめの浅草の空気が、時を超えて伝わってきます。それは建築のようだと思っています。


















津川恵理 教育研究助手(建築設計第一研究室)の推薦図書

『建築20世紀PART1, PART2』1991新建築1月臨時増刊
専門家が良い建築と評価する建築がどんなものなのかを知るには、広く浅く全体に触れられて良いと思います。

『アートは資本主義の行方を予言する』山本豊津著
アートの価値と値段の関係性、アートの値段がなぜ高騰するのかを知りたくて読んで、とても学びになった本です。

『数学する身体』森田真生著
数学者が書いた身体論で、私たちの日常の無意識な思考や行動を論理的に分析してあり、なかなか感動しました。

















湯浅良介 教育研究助手(建築設計第二研究室)の推薦図書

『日本デザイン論』伊藤ていじ
建築を学び出した時初めて読んだ本。一冊目がこれでよかった。

『自分にふさわしい場所』谷郁雄
日常への眼差しを大切にしたくて詩を読む。

『シュタイナーの美しい生活』ルドルフ・シュタイナー
たまたま最近手元に来た。
美しい建築って必要なのかな、なんのためにあるんだろうな、っていう心の奥底にあり続けた疑念を脱ぐってくれた。



















メイサ・ムスバ 教育研究助手(建築設計第三研究室)の推薦図書

『The Second Digital Trn: Design Beyond Intelligence』By Mario Carpo
Although a very complicated book and might be difficult to read, but it shows how Big Data and computerization is affecting design. A very important book for the digital era



















澤田航 教育研究助手(環境設計第一研究室)の推薦図書

憧れる人の本にしました。 

『野生の思考』レヴィ・ストロース
異なるものの間に関係性を見出していく能力は建築家に必要な職能のひとつだと思います。   

『錯乱のニューヨーク』レム・コールハース
初めて読んだ建築家の本。都市を理知的にかつ文学的に語るとこうなるのか。これを読んで感動した僕は間違えて最初経済学部に入ってしまいました。

『アウステルリッツ』W.G.ゼーバルト 
小説。主人公は建築史家。
詳細な建築の叙述の間に差し込まれるフィクショナルな写真や図版。

















徳山史典 教育研究助手(環境設計第二研究室)の推薦図書

本を読むのはちょっと苦手という人も、ここに挙げられたたくさんの推薦図書を、読み切るためのモチベーションになればと。

『センスは知識からはじまる』|水野学 朝日新聞出版

















秋田亮平 教育研究助手(構造設計第一研究室)の推薦図書

『生物から見た世界』 ユクスキュル/クリサート
『家ってなんだろう』 益子義弘
『Powers of ten』 フィリップ+フィリス・モリソン、チャールズ+レイ・イームズ


















辻慎一郎 教育研究助手(建築理論第一研究室)の推薦図書
 古典文学に触れるのも大事かと思いますので、この2冊を推薦します
『陰影礼賛』谷崎 潤一郎
『見えない都市』イタロ・カルヴィーノ
















大島碧 教育研究助手(建築理論第二研究室)の推薦図書

『風景の経験 景観の美について』J.アプルトン
わたしたちが何気なく心地よいと感じる、または、なんだか落ち着かない場所が、なぜそう感じられるのか。地理学者、動物行動学(コンラート)の視点からとてもわかりやすく書かれています。

以下はこれから皆さんが課題の敷地にしていく機会が多いであろう東京の構造や場所性にフォーカスした本です。こうした背景を知ると、普段の生活の中で見えてくるまちの景色も変わってきます。ワクワクしますよ。

『東京の空間人類学』陣内秀信、『見えがくれする都市』槇文彦
とあわせて読むとより学びが深まります

『都市のドラマトゥルギー』吉見俊哉
前半は文章の書き方だけでもとても勉強になる本です




















イラスト:栗原啓伍(B2)

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