会期:2017年5月19日(金)〜 31日(木)
会場:TAPERED GALLERY |テーパード・ギャラリー
(東京都台東区上野公園12-8 美術学部 総合工房棟4F)
開館時間:大学開門時間に準ずる
出展:東京藝術大学藤村研究室(RFL)
藤村龍至・山川陸・大平麻琴・中島桜・崔書維・莫然・孫夢
主催・企画:東京藝術大学美術学部建築科教室
問い合わせ先:050-5525-2234
主旨:
「POST SPRAWL TOKYO」は近代化の過程でスプロール化した大都市の周縁部の変動を対象に、都市の再近代化の可能性を明らかにするためのデザインリサーチである。
根菜類や果実において、組織が外側に向かって急成長することで内部が割れて亀裂が生じることを「鬆(す)ができる」という。そうなると見た目のみならず味や食感も変化するため商品価値が低下する。パンやケーキのスポンジには酵母などで故意に気泡を入れるが、均一でない大きな気泡が入ることを「すをたてる」というが、料理のみかけはほとんど変わらないのに内部から腐敗・変質していくさまも「すがたつ」ということがあり、その場合は酸っぱいの「す」のニュアンスである。また「すだち」というと「巣立ち」と誤解を生じやすいが、「鬆立ち」という場合にはわざと泡を立てすきまをつくる、という意味である。
私たちは、十分に近代化され、拡大した都市の現在を理解するために、このメタファを用いることを考えた。今日の東京では都市の組織が外側に向かって成長しすぎることで内部が割れて亀裂が生じ、「す」ができている。そうなると不動産価値は著しく低下し、荒廃する。
通勤という観点から鉄道沿線自治体の都内通勤率のデータをみると、大きく3段階に分かれることがわかる。都内通勤率40%程度の、現在も都内へ通勤する人々の多くが居住地に選ぶ「安定通勤圏」と、10%以下の、東京に依存しない自立した「地域通勤圏」のあいだに、かつて通勤圏として拡大したものの現在では通勤率が下がっており、将来高齢者と空き家が集中して発生するであろう地域が横たわっていることがわかる。JR高崎線でいうと、川口からさいたま市までの「安定通勤圏」と熊谷から先の「地域通勤圏」のあいだ、上尾から行田までの地域が、それにあたる。私たちはそれを「変動通勤圏」と呼んでいる。この「変動通勤圏」こそが、都市組織が外側に向かって成長しすぎたために発生した亀裂=「す」が集中発生するエリアである。
私たちは、そんな「す」の集中発生の可能性を抱える埼玉県所沢市の椿峰ニュータウンを対象に選び、その将来に対して介入するデザインリサーチを行っている。所沢では1960年代から90年代にかけて、このような大規模な住宅地開発が盛んに進められた。そしてそれらが一斉に高齢化・老朽化する状況は都市経営の観点からみて所沢にとって最大のリスクであり、また転換の可能性を秘めている。今回の展示では、現地でのフィールワークを踏まえ、椿峰ニュータウンの将来を考察するディスカッションから生まれた4点の作品を展示する。
正面ガラスへのドローイングは、雑木林から住宅地への開発、成熟からの世代交代、自然と共生する住宅地として再生する椿峰ニュータウンの輪廻天性の軌跡を描いたものである。ここでは住民の世代交代を含む時間の循環を、円環状のドローイングで示した。左壁面(黒サインの面)の年表は100年のスパンで所沢の歴史を記述し、4つの時代に分けて所沢の近代化の歴史のなかでニュータウン開発を捉え直す試みであある。床面(グレーサインの面)の模型は、狭山丘陵から緑を引き出すように展開する椿峰ニュータウンの成り立ちを示すコンセプト模型。そして右壁面(白サインの面)の4枚のドローイングは、スケールの異なる4つの地図をもとに、椿峰を空間的に捉え直すためのヒントを示す。4つの作品を貫く視点として、インフラとしてのグリーンの存在に着目した。
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展覧会トークイベント(RFLオープンゼミ)
#001 2017年5月24日(水)18:30〜21:00
ゲストスピーカー:上妻世海(作家・キュレーター)
コメンテーター:木内俊克(東京大学建築学科助教)、中山英之 (建築科准教授)
#002 2017年5月25日(木)18:30〜21:00
ゲストスピーカー:平野利樹(東京大学建築学科助教)
コメンテーター:上妻世海、砂山太一(京都市立芸術大学特任講師)
会場はともに美術学部 総合工房棟4F建築科FM。
東京藝術大学藤村研究室(RFL) では、昨年度に引き続き、オープンゼミを開催します。 今年度は2夜連続開催。1日目は、展覧会「Malformed Objects」(2017年)や「世界制作のプロトタイプ」(2015年) のキュレーションで知られる上妻世海氏を、2日目は「Malformed Objects」に出展し『a+u 2017年5月号』の特集「米国の若手建築家」の編集も記憶に新しい平野利樹氏をゲストにお迎えします。 ゲストからのレクチャーの後、コメンテーターを交えての討議を展開します。「Post Sprawl Tokyo」展を踏まえ、都市の再近代化の可能性を多角的に考える会となります。
会場:TAPERED GALLERY |テーパード・ギャラリー
(東京都台東区上野公園12-8 美術学部 総合工房棟4F)
開館時間:大学開門時間に準ずる
出展:東京藝術大学藤村研究室(RFL)
藤村龍至・山川陸・大平麻琴・中島桜・崔書維・莫然・孫夢
主催・企画:東京藝術大学美術学部建築科教室
問い合わせ先:050-5525-2234
主旨:
「POST SPRAWL TOKYO」は近代化の過程でスプロール化した大都市の周縁部の変動を対象に、都市の再近代化の可能性を明らかにするためのデザインリサーチである。
根菜類や果実において、組織が外側に向かって急成長することで内部が割れて亀裂が生じることを「鬆(す)ができる」という。そうなると見た目のみならず味や食感も変化するため商品価値が低下する。パンやケーキのスポンジには酵母などで故意に気泡を入れるが、均一でない大きな気泡が入ることを「すをたてる」というが、料理のみかけはほとんど変わらないのに内部から腐敗・変質していくさまも「すがたつ」ということがあり、その場合は酸っぱいの「す」のニュアンスである。また「すだち」というと「巣立ち」と誤解を生じやすいが、「鬆立ち」という場合にはわざと泡を立てすきまをつくる、という意味である。
私たちは、十分に近代化され、拡大した都市の現在を理解するために、このメタファを用いることを考えた。今日の東京では都市の組織が外側に向かって成長しすぎることで内部が割れて亀裂が生じ、「す」ができている。そうなると不動産価値は著しく低下し、荒廃する。
通勤という観点から鉄道沿線自治体の都内通勤率のデータをみると、大きく3段階に分かれることがわかる。都内通勤率40%程度の、現在も都内へ通勤する人々の多くが居住地に選ぶ「安定通勤圏」と、10%以下の、東京に依存しない自立した「地域通勤圏」のあいだに、かつて通勤圏として拡大したものの現在では通勤率が下がっており、将来高齢者と空き家が集中して発生するであろう地域が横たわっていることがわかる。JR高崎線でいうと、川口からさいたま市までの「安定通勤圏」と熊谷から先の「地域通勤圏」のあいだ、上尾から行田までの地域が、それにあたる。私たちはそれを「変動通勤圏」と呼んでいる。この「変動通勤圏」こそが、都市組織が外側に向かって成長しすぎたために発生した亀裂=「す」が集中発生するエリアである。
私たちは、そんな「す」の集中発生の可能性を抱える埼玉県所沢市の椿峰ニュータウンを対象に選び、その将来に対して介入するデザインリサーチを行っている。所沢では1960年代から90年代にかけて、このような大規模な住宅地開発が盛んに進められた。そしてそれらが一斉に高齢化・老朽化する状況は都市経営の観点からみて所沢にとって最大のリスクであり、また転換の可能性を秘めている。今回の展示では、現地でのフィールワークを踏まえ、椿峰ニュータウンの将来を考察するディスカッションから生まれた4点の作品を展示する。
正面ガラスへのドローイングは、雑木林から住宅地への開発、成熟からの世代交代、自然と共生する住宅地として再生する椿峰ニュータウンの輪廻天性の軌跡を描いたものである。ここでは住民の世代交代を含む時間の循環を、円環状のドローイングで示した。左壁面(黒サインの面)の年表は100年のスパンで所沢の歴史を記述し、4つの時代に分けて所沢の近代化の歴史のなかでニュータウン開発を捉え直す試みであある。床面(グレーサインの面)の模型は、狭山丘陵から緑を引き出すように展開する椿峰ニュータウンの成り立ちを示すコンセプト模型。そして右壁面(白サインの面)の4枚のドローイングは、スケールの異なる4つの地図をもとに、椿峰を空間的に捉え直すためのヒントを示す。4つの作品を貫く視点として、インフラとしてのグリーンの存在に着目した。
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展覧会トークイベント(RFLオープンゼミ)
#001 2017年5月24日(水)18:30〜21:00
ゲストスピーカー:上妻世海(作家・キュレーター)
コメンテーター:木内俊克(東京大学建築学科助教)、中山英之 (建築科准教授)
#002 2017年5月25日(木)18:30〜21:00
ゲストスピーカー:平野利樹(東京大学建築学科助教)
コメンテーター:上妻世海、砂山太一(京都市立芸術大学特任講師)
会場はともに美術学部 総合工房棟4F建築科FM。
東京藝術大学藤村研究室(RFL) では、昨年度に引き続き、オープンゼミを開催します。 今年度は2夜連続開催。1日目は、展覧会「Malformed Objects」(2017年)や「世界制作のプロトタイプ」(2015年) のキュレーションで知られる上妻世海氏を、2日目は「Malformed Objects」に出展し『a+u 2017年5月号』の特集「米国の若手建築家」の編集も記憶に新しい平野利樹氏をゲストにお迎えします。 ゲストからのレクチャーの後、コメンテーターを交えての討議を展開します。「Post Sprawl Tokyo」展を踏まえ、都市の再近代化の可能性を多角的に考える会となります。